研究概要 |
Membrane Cofactor Protein (MCP)は、自己細胞を補体攻撃から保護する制御膜蛋白質であると同時に、麻疹ウイルスのレセプターでもある。本研究では、医薬への応用可能な低分子型MCPを設計するために、MCPの機能部位の解明を進め、以下の3点に要約される研究成果を挙げることが出来た。 1:MCPのSCRの機能部位 MCPの細胞外領域には、アミノ酸60残基からなる4個のShort Consensus Repeat(SCR)ドメインが連続している。遺伝子工学的な手法を駆使することにより、i;SCR1,2は麻疹ウイルス感染に不可欠な領域である、ii;SCR2,3は古典的経路を介する補体活性化の制御に不可欠である、iii;SCR3,4は第二経路を介する補体活性化の制御に不可欠である、ことを明らかにした。 2:MCPのST領域によるMCPの機能制御 MCPのSCRドメインには、Ser/Thrに富む領域(ST)が接続する。STには、構造の異なるA,B,Cの3種類があり、ST^<A-B-C>,ST^<B-C>,ST^Cの3タイプが臓器特異的に発現している。麻疹ウイルス感染性と古典的経路の阻害活性に関しては、ST^C>ST^<BC>>ST^<ABC>の順になり、その長さと反比例した。一方、第二経路の阻害活性に関しては、逆にSTのサイズが大きくなるほど阻害活性が強くなることが明らかになった。 3:麻疹ウイルス感染性におけるMCPの膜貫通領域の重要性 MCPの膜貫通部を欠損させ、脂質膜にGPIアンカー型として発現させた場合には、麻疹ウイルス感染性を示さなかった。これは、麻疹ウイルスの細胞内侵攻には、膜貫通部の構造が不可欠なことを意味している。
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