研究課題/領域番号 |
06557132
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 雄一 東京大学, 薬学部, 教授 (80090471)
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研究分担者 |
並木 充夫 住友製薬株式会社, 総合研究所, 副主任研究員
山中 正己 帝京大学, 医学部, 教授 (20082109)
中村 敏一 大阪大学, 医学部, 教授 (00049397)
加藤 将夫 東京大学, 薬学部, 助手 (30251440)
寺崎 哲也 東京大学, 薬学部, 助教授 (60155463)
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キーワード | サイトカイン / ポリペプチド / 増殖因子 / ドラッグデリバリーシステム |
研究概要 |
肝疾患治療薬としての開発が期待される肝細胞増殖因子(HGF)のドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発を試みた。HGFの血中消失には肝臓のHGFレセプターと細胞表面ヘパリン様物質とが関与する。そこでラットin vivo系を用い、ヘパリンとHGFとを同時に投与した時のHGFの血中滞留性を検討した。その結果、ヘパリンの投与量依存的にHGFの血漿中濃度下面積が2-3倍に増加し、血中滞留性の向上が明かとなった。また、同時投与においてはHGF単独投与に比べ、HGFの臓器分布が臓器によらず半分以下にまで低下した。肝臓への移行の変化を観察するため肝灌流系を用いて解析したところ、HGFの肝抽出比はヘパリン濃度(0-3mg/ml)依存的に半分以下にまで低下し、クリアランスの低下が証明された。 次に、ヘパリンとの同時投与によって、HGFの生物活性が損なわれないかどうかを検討するため、初代培養肝細胞系を用い、ヘパリン存在下でのHGFのDNA合成促進活性を検討した。その結果、最大効果の半分を与えるHGF濃度がヘパリン存在下において若干高濃度側へシフトしたものの、最大活性の値はHGF単独と同程度であった(これらの結果は科学雑誌Hepatologyにも報告した)。以上よりヘパリンとの同時投与のDDSとしての有効性が示唆されたが、血中滞留性を向上させるのに必要なヘパリンの投与量は5-20mgと極めて高いため、ヘパリンによる抗凝固作用等の副作用が懸念された。今後は、ヘパリンのもつ生物活性を有しないヘパリン類似物質の探索が急務である。 一方、上皮成長因子の高分子ミセルによるDDSの開発を試みたところ、ミセルの合成には成功したものの、期待したほどの血中滞留性の上昇は観察されなかった。この原因としてコレステロールと高密度リポ蛋白との結合が、内因性血漿蛋白によって阻害されるためではないかと考えられた。
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