研究概要 |
生体および生命現象における一重項酸素の役割・作用に関する研究については、従来光線過敏症など特殊な条件下のものが多く,本質的に重要な研究は行われてこなかった。しかしながらNitric Oxide(NO)あるいはCarfon Monooxide(CO)などの低分子酸化物の生体内情報伝達のセカンドメッセンジャーとしての役割が注目される中,これらと類似の電子構造を持つこの一重項酸素は重要な研究課題となってきている。本研究はこの活性酸素である一重項酸素を非常に高い特異性のある方法すなわち近い赤外領域での発光(具体的には1268nm)で検出する装置を開発し、その応用をはかることを目的に行われている。 平成6年度には、当初の目的である一重項酸素検出装置を完成させることができた。本装置は紫外分析から可視部までの光励起が可能なArレーザーを備え、1000nmから1600nmまでの発光を捉える分光器も装備している。このようなシステムは世界ではじめてのもので100%の信頼性で一重項酸素を検出することができる。更に光非依存型の化学反応からの一重項酸素も検出することができる。このことにより、(1)Photodynamic Therapyのための化合物の開発(2)ニューキノロン系抗菌剤など副作用として光線過敏症を引きおこす薬剤の作用機序の解明,(3)酵素系・培養細胞系など非光依存系からの一重項酸素生成の有無とその作用機作,(4)非光依存の化学反応による一重項酸素生成の有無,など各種実験系が可能となった。なお一重項酸素生成を定量的にとり扱うための標準試料としてはナフクレンエンドパーオキサイド類,ローズベンガルなどを用い検量線を作製した。
|