研究概要 |
1.ヒト気道トリプターゼの精製法の検討と性状の検索:慢性気道疾患患者の粘性-粘膿性痰からヒト気道トリプターゼ(以下HAT)の精製法をさらに検討した。精製過程でHATと分泌型IgAに結合しやすいことが判明し、0.5-1.0MのNaClや10%glycerolを含むbufferで処理することにより両者は分離した。同時に、分泌型IgAがHATの活性を増強することが明らかになった。HATのN末端のアミノ酸配列をアミノ酸sequncerで分析し、20個まで明らかにした。以上投稿中。 2.HATの局在部位:喀痰から精製されるHAT量が微量であるため、N末端20残基のアミノ酸配列をもつペプチドを合成し、これで家兎を免疫し抗体を作成した。この抗体を利用する免疫組織化学的検索により、この抗体と反応する物質は気管支粘膜下の分泌腺、漿液腺に特異的に存在した。この成績からHATは主に気道壁の分泌腺から分泌されと考えられた。この項投稿準備中。 3.HATの遺伝子工学的合成法に関する研究:HATのN末端アミノ酸配列(10残基)を基にしDNAプローブを化学合成した。このプローブを用いて、ヒト肺および気道由来cDNAライブラリーよりcDNAをクローニングした結果、気道由来DNAによりクローニングに成功した。この結果、HATのcDNAの全塩基配列が明らかになった。さらに、HATの一次アミノ酸配列を推定し、データベースに対するホモロジー検索の結果、既知の遺伝子、タンパク質で一致するものがないことが明らかになった。また、precursorHATは分子量が約46,000で、我々が喀痰から分離したHAT(分子量28,000)は前者の分泌型あるいはmature formに相当することが明らかになった。ここまで投稿準備中。現在、大腸菌による組換えHATタンパク質発現について実験中。 4.HATのウイルス増殖に対する影響:HATはインフルエンザウイルス増殖促進作用がなく、その不活性作用を示すことが明らかになった。
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