研究概要 |
「ドーパは神経伝達物質である」との作業仮説の実証を進めてきた。線条体においてはドーパはドパミンの前駆物質であるとともに,ドパミン遊離促進系のシナプン前β受容体ならびに自発運動に関わるシナプス後ドパミンD_2受容体の内因性増強物質であることが実証された,またドーパは孤束核に終末する圧受容器反射第一次求心性繊維に一つの伝達物質たりうることを証明した。本研究実績として[1]パーキンソン病態時に出現する一つのドーパ受容体発現系としての線条件アセチルコリン遊離系を確立した。6-ヒドロキシドパミン投与ラット線条体微量透析系においてドパミンD_1刺激は同遊離を促進,D_2,D_3刺激は同抑制を生じ,いずれの応答も正常ラットに比し,感受性増大が見られた(Brain Res.655,233;Neurisci.Lett.173,59,1994)。D2感受性増大は,GTPasc活性の亢進を伴ったが受容体およびGi蛋白質の遺伝子発現の変化を生じないから,受容体数の増加によるものではなく、受容体-G蛋白関連の伝達効率増大によると考えられた。(Neurosci.Lett.175,107,1994)。プローブを介して注入したL-ドーパ(10と100nM)は同遊離を同程度に抑制,一方、D-ドーパ10nMとドパミン100nMは無作用であった。L-ドーパの抑制作用はドパミンD_2/D_3拮抗薬のスルピリドおよび中枢性ドーパ脱炭酸酵素阻害により修飾されなかった。(Ncurosci.Res.,Suppl.19,S108,1994;Biomed.Pharmacother.,1995)。学術上はパーキンソン病態時に発現する"ドーパ受容体"系を発見したといえる。しかしその抑制程度は正常時5%,病態時25%であり,本研究計画の第二次スクリーニングには不十分と判断された。[2]アフリカカツメガエル卵母細胞を用いた,病態モデルから作成したドーパmRNA注入・発現系において,約10種のドーパメチルエステルのpara-I,Br,F-phcnyl.mcta-CF_3-phcnyl誘導体等はいずれもドーパに対する拮抗活性を示した。しかし,第二次スクリーニング前段階の線条体微量透析ドーパ自発性遊離系を用いて安定性を検討したところ,拮抗薬候補はすべてドーパに変換され,ドーパメチルエステルに比し,利点はないと判断した。
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