研究概要 |
これまで収集してきた敗血症患者および急性心筋梗塞、肝疾患などその他の重症疾患患者の血清中Mn-スーパーオキシドディスムターゼ(Mn-SOD)を測定し、成人呼吸切迫症候群(ARDS)の発症診断について検討した。ARDS発症予知について従来用いられていた他の臨床検査データと比較検討した。カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、第VIII因子、乳酸脱水素酵素(LDH)、α1Pi-エラスターゼ複合体および検血分類、肝機能検査(AST,ALT)の測定を行い、Mn-SODと有効性を比較した。その結果Mn-SODは敗血症の患者では健常人よりは高値をとるが、ARDSを併発した敗血症患者ではARDSと診断される6〜24時間前にすでに有意な高値を示した。また他の検査値と比較してもその有効性は最も優れていた。特にMn-SODは高値の血中半減期が長いため高値を持続し測定時期にかかわらず診断に優れていた。また急性心筋梗塞や急性肝炎患者においても高値を示したが他の臨床検査(CPK,AST,ALTなど)と比較することにより鑑別は可能でARDSの診断の妨げにはならなかった。 測定系についても従来は測定に4時間以上を要していた酵素免疫測定法(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay ; ELISA)を改良し、2時間以内で測定できる系を開発した。またベッドサイドで極めて短時間で半定量を行う測定系についても実用化に明るい見通しが立っている。 以上より敗血症患者でMn-SODを測定することはARDS発症の予知法として現時点では最も有効であると考えられ、またその簡便、迅速な測定法も確立した。
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