研究概要 |
今までの農薬散布用防除衣の研究は主に防除衣本体についての研究がなされてきているが,今回の我々の研究では,防護装具とて不可欠の手袋とマスクについて,暑熱環境下であってもより温熱的快適性を得られるようなものを求めて研究を行った。具体的には,手袋の素材として現在の技術で改良可能な範囲で,手袋の前腕部に高透湿性素材(ゴアテックス)を用いた試作品と,従来一般に使用されているポリウレタン製の2種類の長手袋について,暑熱環境下(28℃,60%)で自転車エルゴメーター(50W)による運動を負荷した着用実験を被験者7名により行い,比較検討した。その結果,改良を加えた手袋の方が,手袋内の温湿度は有意に低く,また手袋内の皮膚面の発汗量も少ないことが分かった。またマスクについては,従来の農薬散布用に使用されるマスク(3M.NO.8710)を着用した場合と,マスク着用と同時に頭部(前頭部および頭頂部)にアイスノンを当て,冷却した場合について,暑熱環境下(28℃,60%)で自転車エルゴメーター(50W)による運動を負荷し,被験者6名により着用実験を行った。その結果,アイスノンを当てた場合の方が発汗量,心拍数は有意に低く,直腸温の上昇も抑制された。また着用感(温冷感,湿潤感,快適感)もアイスノンを当てた場合の方が良好な評価が得られた。今後フィールドで応用していくためには,手袋の場合はさらに手背部にも高透湿性素材を使用できるような技術の開発が進めばかなり着用感は改善されると思われる。またマスクについては,マスクそのものの素材の開発と同時に,頭部冷却用の帽子(アイスノンを挿入できる)の開発が望まれる。
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