研究概要 |
本年度には、静電容量(EC法)による装置を試作し、さらに、ここでの評価は酸化、還元、染色などの化学的処理と、擦過、摩耗、プラズマ処理などの物理的損傷を施した試料、さらに、エポキシやポリマー処理した試料について、その構造変化を光学顕微鏡(LM)、走査電子顕微鏡(SEM)及びフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いて検討し、各処理の程度と羊毛構造の変化度との関係について評価した。これらの試料を、試作されたEC法装置により吸水速度の測定行い、この測定値と上記の各構造変化度との相関を調べ、また、Willhelmy法に基づく動的接触角(θ)のデータとの関連について検討し、以下の結果を得た。繊維直径が小さくかつ捲縮度の高い羊毛繊維ではEC法による評価法が困難であるので、まず、繊維直径が大きい毛髪試料で予備的に検討を行った。未処理毛髪では表面が高撥水性であり10本以上の繊維束であっても毛管現象に基づく水分移動は認められなかった。一方、ジクロロイソシアヌ-ル酸(DCCA)による塩素化試料及び紙やすりによる機械的損傷試料では、明確な水分移動が数本の繊維束でも観察された。しかも、移動速度は表面の損傷度に基づく親水化度(Wilhelmy法による接触角)に依存することが分かった。高捲縮性の羊毛繊維束でも測定は可能であるがデータの再現性の点では問題を含んでいた。ただし、布試料で適当な媒体を選んでWilhelmy法による接触角測定と組み合わせて評価することによりかなりの改善が見られた(9th Int. Wool Textile Res. Conf.,Biella,1995)。
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