研究概要 |
本年度は,前年度の試作結果を踏まえて,将来の集積回路において波長を情報担体として用いる際の技術的課題を明らかにし,達成される性能を評価した. 1.まず,試作の結果判明した問題としては,波長数を増加した場合に,それぞれを識別する光学フィルタを作成する工程数が増加し,これに伴い光学フィルタの加工が困難になるという問題があげられる.これいついては,フィルタ堆積後のプロセスを極力削減するプロセスフローを考察し,再度試作実験を行った.この結果,4波長程度を識別する素子の場合,現状でも十分安定に作製可能であることが判明した.一方,さらに多重度を増加する場合を想定し,単一の誘電体多層膜により多数の波長に対するフィルタを一括して作成する方法を考案した.この方法についての計算機シミュレーションを実施し、波長特性の制御性などの定量的評価を行った. 2.多波長OEICにおいては,本研究で試作する波長選択素子の他にポリイミド導波路,面発光レーザ等を集積化する必要がある.これらの素子を集積化し,多波長光ハイパーキューブなどの大規模なマルチプロセッサネットワークを構成した場合に達成される性能を評価した.特に,使用可能な波長数に関して再度評価した結果,光導波路幅を20μm程度に微細化し,誘電体多層膜フィルタの膜厚を8μm程度,レーザのゲインバンド幅を100nm程度とした場合,現在の加工精度で約8波長の多重化が可能であることが判明した.また,波長多重化によりネットワークの面積的複雑さが波長数の2乗に反比例して減少することを明らかにした.すなわち,上記の考察で導出された波長数8の多重化が実現された場合,ネットワークの面積的複雑さは,約1/64に減少することを初めて示し,波長多重化の有効性を実証した.
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