研究概要 |
前年度までに一応シングルタスクでの概念スキーマモデル機能は実装を行ったことに引き続き,本年度は,概念スキーマモデル機能をマルチセッションで動作させるための実装作業を行おうとしたが残念ながら,マルチセッションの下に動作する概念スキーマモデル機能は完全には実装を完了することができなかった.採用したオペレーティングシステムの基礎的なコマンドの動作を使いこなすことが最後までできなかったからである. 実装面では所期の成果が得られなかったが,実装のための設計を通じて概念スキーマモデル機能の性格がなお一層明確になった.本年度新たに付け加わった知見は (1)エンティティタイプは集合と考えて問題ない.従ってあるエンティティタイプのインスタンスは集合の要素としてあるエンティティタイプに属する. 我々のモデルではエンティティ全体を表す集合Eはエンティティタイプであるが,同時にそれはエンティティタイプ全体を表すエンティティタイプ・タイプFのインスタンスと考える.すなわちE∈F.一方,Fの要素はエンティティタイプであるが,我々のモデルではエンティティタイプそれ自身エンティティとかんがえるのでF⊂Eが成立する.従ってE∈Eとなる.これは常識的な集合の直観と相反するが,well-foundedという集合論の公理を満たさない集合論を採用すれば別段問題はないことが判明した. (2)概念モデルを述語論理と集合論で記述されるモデルとする. 概念モデルとして今までオブジェクト指向データモデル想定していたが,これを述語論理の論理式とすることにした.理由は概念モデルとして提唱されるモデルが複数個存在する以上,具体的な仕様を唯一無二の概念モデルとして主張することはできなく,それらの間に等価性が証明できればそのいづれをも等価な概念モデルと考えられる.二つのモデルが等価であるか否かを判定するには理論式であると既存の理論を利用することができるためである.
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