研究概要 |
昨年に引き続き,分布型水循環モデルと洪水予測モデルに使用するリモートセンシング(RS)データと標高データの精度向上を行なってきた.その結果,フィリピンとスリランカの各対象流域に対するSPOTとLandsatリモートセンシングデータに適合させることができるいくつかの分類スキームが得られた.異なる分類スキームから得られた土地利用パターンは,グランドトル-スデータと比較され,水循環シミュレーションに対する各スキームの感度が解析された.解析結果から,階層統計分類スキームが水循環シミュレーションにふさわしい分類手法であることがわかった. フィリピン・アグノ川流域,タイ・チャオプラヤ川上流域,スリランカ・コロンボ流域に対し,DEMを使い河川網を生成するためのディジタル標高データの適合性が試験された.その結果,フィリピン・アグノ川流域とスリランカ・コロンボ流域では,10〜20mの等高線間隔の5万分の1の地図を用いると極端に平坦な地勢ではほとんど等高線がなく,適切な河川網を生成するには不十分である.これら2つのケースの場合,有用な等高線データを持つSPOTデータと組み合わせ,Kniging手法を用いて平坦な地域の等高線を再生成すれば,衛星画像から得られる河川網と良く一致することが分かった.タイ・チャオプラヤ川上流域の場合,流域面積が約7000km^2で,USA,NGDCの1kmグローバル・データセットから得られた河川網,そして5万分の1の地図から部分的に数値化したデータから作成したDEMから得られたは河川網が,数値化された実際の河川網と比較された.比較の結果,大きな流域面積の場合グローバル・データセットが物理的基礎に立つシミュレーションに十分使用可能なことが明らかにされた. 土地利用と地形のデータセットの準備は,上述した手法を用いることにより完了する.また,土壌水理特性図,地下水帯水層特性のデータセットは既に準備されている.これらのデータを用い,洪水を引き起こした主要な台風のシミュレーションがフィリピン・アグノ川流域とタイ・チャオプラヤ上流域に適用され,観測結果と良い一致が得られることがわかった.詳細なシミュレーションモデルとその結果に基づき,分布型水循環モデルがタイ・チャオプラヤ上流域の部分流域に対して作成され,上流観測地点で与えられた上流境界条件が用意された.それによりチェンマイ市での洪水発生が予測できるようになった.このモデルはパーソナル・コンピュータで実行可能で,約85%の精度で11時間先まで洪水予測ができた.このモデルは,現在タイ王立灌漑局(RID)の地方水文事務所に設置され適用性を試験している. 現在,このシステムを使いシミュレーションに関連する他の課題の自動化とWWWを用いた結果の普及が試験されている.
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