現在の応急仮設住宅を巡る問題の根源は、災害後の応急居住に対するフィロソフィーの欠如である。現在の厚生省の応急仮設住宅に供給に対する基本理念は、「自らの資力では住宅を確保できないもの」に対し応急仮設住宅を供給するというものである。しかし、現状では住宅を失った入居希望者全員に応急仮設住宅を供給するように変化してきてい。今回、自力で仮設住宅を確保している人も多く居る。まず、「災害後の仮住まいについてはすべての被災者に何らかの補助を行う」というように災害救助のフィロソフィーをまず改めるべきである。応急仮設住宅の住宅水準・住性能は仮設という性格上、最低限度のものにならざるをえない。今後の応急仮設住宅への指針としては、第1に応急仮設住宅の供給戸数を最小限に留めることが挙げられる。 阪神・淡路大震災に際し行った応急仮設住宅供給には、様々な問題点が指摘される。応急仮設住宅の使用期限は2年とされているが、雲仙・奥尻の事例共、2年を越えての使用が為されてきた。今回の応急仮設住宅も阪神間の低家賃の住宅がほぼ壊滅的な被害を受けた現状を見ると、長期に渡って使用される事例が数多く発生すると考えられる。今回建設された、応急仮設住宅の将来構想を考える上で考えるべきポイントは、1)コミュニティーの問題、2)立地条件の2つである。阪神・淡路大震災に際して建設された応急仮設住宅に関しては、1)郊外型の応急仮設住宅については、住性能を向上させ、共用施設を充実させることにより、災害公営住宅として整備していく方針、2)都市内部に建設された応急仮設住宅については早期に撤去する、といった2本立ての対応が必要である。 多様な住宅供給システムの利用を図ることにより、災害後の「仮住まい」の供給を行うべきである。「仮住まい」供給は、被災者の救助という視点ではなく、災害からの復興の一段階という位置づけで為されるべきである。
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