研究概要 |
本研究の目的は、雲仙において、リアルタイムに土石流の予測を行う手法を開発し、予警報システムの確立を計ることである。まず土石流の現地観測を行い、ハイドログラフのデータの蓄積を行う。また建設省九州北部レーダなどのデータを収集し、降水レーダデータベースを構築する。次に、得られたハイドログラフ、水位と雨量などのデータをニューラルネットワークに与えて学習させ、予測システムの開発を行う。本研究で得られた結果は以下のとおりである。 (1)普賢岳周辺の中尾川、湯江川において、超音波水位計、電波流速計などから成る計測システムを設置し、流下して来る土石流を観測した。'94年、'95年は例年にくらべて雨が少なく、得られたハイドログラフは小規模であった。 (2)雲仙の時間雨量データの累加値と総雨量を入力とし,土石流による堆積土砂量を出力とするニューラルネットワーク・モデルを構築した。そのモデルの検証のために,水無川における雨量-土石流堆砂量の関係を土石流発生毎に,過去の事例を学習-次の事例に対して予測させた。予測結果は,本モデルが水無川における土石流堆砂量の予測に有益であることがわかった。 (3)ニューラルネットワークを用いて水無川における土石流の流出解析を行った。土石流の流出に関する土砂水理学的式をもとにしたニューラルネットワーク・流出モデルは1993年6月12-13日の実測ハイドログラフをモデリングすることができた。さらに,その流出モデルは,1991年から1993年に発生した土石流の堆積土砂量を推算し,実測堆積土砂量と比較を行い,有効性を示した。 (4)土石流の発生予測は降雨パターンを土石流発生パターンと不発生パターンに判別することと考え,クラス分類を目的としたLVQ・モデルを利用し,土石流の発生予測精度の向上を試みた。発生予測に用いたLVQは従来の階層型ネットワークに比べて,単純なアルゴリズムでありながら,高い精度で発生と不発生の判定が可能であった。また,従来の階層型ネットワークについては,その関数近似の特性を利用した土石流の発生限界降雨の評価手法を提案し,累加雨量と発生限界理論をもとに,その妥当性を示した。
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