本研究の目的は、水域における有機性懸濁性粒子の沈降特性を定量的に把握するための分画手法を開発することである。具体的には、河川における有機性懸濁粒子の沈降現象、湖沼における藻類の沈降現象ならびに溶存酸素の消費課程などを機構解明の立場から詳細な検討を行い、併せて水環境管理のための各種懸濁性有機物質の数理モデルを開発することである。本研究では以下に示すような成果が得られた。 (1)佐賀市街部の水路・河川から採水した試水について、有機性懸濁粒子の沈降解析を行い、単粒子沈降速度による分画を行った。沈降を伴う有機性懸濁粒子の溶存酸素消費について定式化し、分画された粒子群の脱酸素係数を求めた。脱酸素係数は粒径(沈降速度)によって異なり、大粒径ほど酸素消費速度は小さくなることを明らかにした。得られた基礎データを用いて、雨水滞水池での有機性懸濁物質濃度と溶存酸素濃度を求めるための数理モデルを構築し、水質予測を行った。予測結果からは、約1日程度でも無酸素状態が再現される可能性があることなどが明らかとなった。 (2)湖沼における有機性懸濁物質は藻類濃度で代表されることから、佐賀県の北山ダムを対象として藻類の増殖・沈降現象の解明を行い、水温躍層において沈降速度の減速現象が存在すること、減速課程においては溶存酸素濃度が減少するため、無酸素状態になることは明らかにした。また、この藻類の沈降現象をモデル化し、現地観測データとの照合を行い、モデルパラメータを推定した。得られた数理モデルから、懸濁性物質濃度、藻類濃度(CODで換算)、溶存酸素濃度の分布の時空間的変化について、北山ダムの実現象を矛盾なく、かつ長期に渡って(数年程度)再現できることを示した。
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