研究課題/領域番号 |
06558089
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 淳一 北海道大学, 薬学部, 教授 (90221241)
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研究分担者 |
繁森 英幸 北海道大学, 薬学部, 助手 (70202108)
石橋 正己 北海道大学, 薬学部, 助教授 (90212927)
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キーワード | 多剤耐性 / P-糖タンパク / 抗がん剤 / イチイ / ジテルペン / タキソ-ル |
研究概要 |
がん患者の増加に伴って、がん化学療法における抗がん剤の重要性はますます増加しているが、抗がん剤が効かなくなる多剤耐性が大きな問題となっている。最近、抗がん剤の細胞外排出にP-糖タンパクと呼ばれる膜タンパク質が関与することが知られており、本タンパク質の機能を阻害する物質が多剤耐性克服に有効と考えられる。本研究では、種々の天然物とその合成類縁体を素材として、P-糖タンパク機能阻害物質の探索を行った結果、昨年度までに数種の天然物にその活性を見い出してきた。以下に本年度の研究成果の概要を報告する。 薬用植物、海洋動物、微生物の抽出物について、ヒト卵巣癌の多剤耐性発現株2780AD細胞を用いて、その細胞内の抗癌剤ビンクリスチンの蓄積増加量を指標としてスクリーニングを行った。その結果、北海道産イチイ(Taxus cuspidata)より数種の転位型タキサン骨格をもつ新規ジテルペン化合物(タキサスピン類)を分離した。このうちのタキサスピンJおよび数種の既知タキサン化合物に上記耐性発現細胞においてビンクリスチンの蓄積増強作用が認められ、その強さは既知のP-糖タンパク質機能阻害物質として知られるベラパミルとほぼ同等であった。タキサスピンJでは構造の類似した抗癌剤タキソ-ルのような顕著なチューブリン脱重合阻害作用や殺細胞活性は認められなかったことから注目すべき結果と考えられる。そこで、活性の認められたタキサン化合物について、P-糖タンパク質とアジトピンとの結合阻害実験の検討を行った結果、これらの化合物にはP-糖タンパク質とアジトピンの結合をベラパミルと同程度か、それ以上の結合阻害活性を示していることが明らかとなった。以上、今回数種のタキサン化合物にP-糖タンパク質機能阻害作用を見い出し、そのうちのいくつかの化合物にはP-糖タンパク質とアジトピンとの結合を競合的に阻害する作用が認められた。今後さらに新たな活性物質のスクリーニングを行うとともに、活性発現に重要な構造因子の特定を行うことにより、抗がん剤耐性克服薬の開発をめざした優れたリ-ド化合物とするとともにin vivoでの耐性克服能を検討したいと考えている。
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