研究概要 |
本年度は、サレイ錯体を用いる不斉エポキシ化を実用的なものにするために不斉収率の改善とサレン錯体の大量合成法の検討を先ず行なった。先ず、これまでの基礎実験で明らかにしたサレン錯体の不斉誘起機構に基づいて軸不斉を持つ新規サレン錯体を合成し、シス二置換ならびに三置換オレフィンで90-99%の高不斉収率を達成した。また、サレン錯体の合成法にも検討を加えて100gのスケールでサレン錯体の合成が可能であることを示すことができた。この新しい不斉エポキシ化法を用いて医薬品合成の重要中間体である(4S,5S)-4,5-epoxy-6,6-dimethylchromano〔c〕furazanや(1S,2R)-indeneoxideを98%以上の光学純度で合成する方法を開発した。また、エポキシ化の際の共酸化剤として、これまでに用いていた次亜塩素酸ナトリウムの他に安価な過酸化水素が使用可能であることを明らかにした。 さらに新たなサレン錯体を開発する目的で3,6-dimethylcyclohexanediamineを光学活性なジアミンとして開発した。これを用いてサレン錯体を合成しエポキシ化を行なったところ、95%以上の不斉収率でエポキシドが得られることが明らかになった。まだ、配位子の合成に難点が残されているものの新たな高不斉誘起能を持つサレン錯体として注目される。今後、合成法の改善を検討する予定である。 以上のように、本年度に予定した計画は、ほぼ所期の目的を達成することができた。
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