研究概要 |
昨年度はサレンマンガン錯体を触媒に用いた共役オレフィンの不斉エポキシ化の実験で高エナンチオ選択性を達成することができた。本年度は、本反応の適用範囲を知る目的で種々の基質の検討を行い、本反応が高い官能基選択性を持つことを明らかにすることができた。また、これらの実験から、本反応の不斉誘起のセンスに関する一般的な経験則を明らかにすることができた。 また、昨年度の共役オレフィンの不斉エポキシ化の研究で不斉収率の改善が求められていた1,3-シクロアルカジエンの不斉エポキシ化も、共酸化剤に食塩で飽和した次亜塩素酸水溶液を用いて低温でエポキシ化を行うことにより高不斉収率を達成することができた。例えば、医薬品等の合成の重要中間体である3,4-エポキシ-1-シクロペンテンを、シクロペンタジエンのエポキシ化によって93%eeの不斉収率で得ることができるようになった。 サレン錯体を用いる不斉エポキシ化の有用性を示す目的で昆虫フェロモンの合成研究を行い、穀物につく甲虫(Cryptolestes pusilus)の集合フェロモンやカミキリムシの一種(Phoracantha synonyma)の防御物質の直裁的不斉合成法を開発した。 サレンマンガン錯体触媒を用いる不斉エポキシ化の機構に関しても興味ある知見を得ることができ、酸素原子移動反応がメタラオキセタンおよびラジカル中間体を経て進行することを明らかにすることができた。 以上のように、本年度に予定した計画は、ほぼ所期の目的を達成することができた。
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