研究概要 |
化学合成ペプチドライブラリーによるプロテアーゼの基質特異性決定法の確立に関する基礎的な研究を行った.この方法は樹脂に固定したペプチドを化学合成する際に特定の位置を多種のアミノ酸の混合物で作製し,プロテアーゼで切断されたものを分離し,分析することにより基質特異性を明らかするものである.まず,樹脂に結合したままの状態のペプチドライブラリーを作製するためには合成時の各種アミノ酸の保護基の除去反応によりペプチドが樹脂より分離しないようにする必要がある.これには通常Boc法で用いられるクロロメチル樹脂を用いFmoc法で合成を行った.プロテアーゼとしてはキモトリプシンをモデル酵素として用い切断反応を調べたところ低い反応性しか示さなかった.そこで樹脂とペプチドの結合部分の間にポリエチレングリコールのスペーサーが挿入されているTenta Gel Resin S Type(Shimazu)を用いたが反応性は上がらなかった.そこで,樹脂と反応性のペプチドの間にグリシンのテトラマ-をスペーサーとして入れるデザインにしたところ反応性が30倍に上昇した.グリシンは天然にも存在するアミノ酸なので他のプロテアーゼを用いた場合には切断される可能性もあるため,スペーサーに関してはさらに検討の必要がある.つぎに特定の位置にアミノ酸をランダムにもつペプチドを作製するために各種アミノ酸の混合比を変えてペプチド合成をし,アミノ酸配列分析を行うことにより,Thr,Lys,Asp,Asn,Glu,Gln,Tyr,Phe,Ile,Leu,Val,Alaの12種のアミノ酸残基の存在比が3倍の範囲内におさまるように作製することに成功した.P1,P1′,P2部位がそれぞれランダムなペプチドライブラリーを作製し,キモトリプシンの基質特異性が従来の報告と一致することを確認している.
|