研究課題/領域番号 |
06558097
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
江崎 信芳 京都大学, 化学研究所, 助教授 (50135597)
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研究分担者 |
岡 正則 東洋紡(株), 敦賀バイオ研究所, 主席部員
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 助手 (70243087)
吉村 徹 京都大学, 化学研究所, 助手 (70182821)
左右田 健次 京都大学, 化学研究所, 教授 (30027023)
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キーワード | 封入体 / グルタミン酸ラセマーゼ / アラニンラセマーゼ / 分子シャペロン / GroESL / タンパク工学 |
研究概要 |
遺伝子の人為的改変とその発現はタンパク工学における最も基本的な技術のひとつであるが、E. coliを宿主として外来遺伝子を発現させた場合、不溶性の封入体(inclusion body)を形成する例が知られている。この場合、変性剤等による変性-再生操作によって必ずしも活性なタンパク質が得られるとは限らず、封入体形成はタンパク工学的手法に基づく研究やその実用化において一つの問題点となっている。本研究は、外来遺伝子発現時に分子シャペロンを共発現させることにより封入体形成を押さえ、外来タンパク質の生産性の向上を目指したものである。本年度は、いずれも大量発現させた場合に封入体を形成するE. coli由来グルタミン酸ラセマーゼのHis210をフェニルアラニン残基へ変換した変異型酵素(GluR-H201F)、およびアラニンラセマーゼのN末端ドメインペプチド(AlaR-N-Frag)の発現に対するE. coliの分子シャペロン、GroESLの効果を明らかにした。GluR-H201F遺伝子をpUC108上、lacプロモタ-下にE. coli JM109を宿主に発現させた場合、生成タンパク質は封入体を形成し可溶性画分には検出されなかった。GroESL共発現下では80%以上が可溶性画分に得られ、野生型に対して0.02%程度の活性が検出された。AlaR-N-Fragの場合でも同様に、GroESL共発現下でタンパク質の可溶化と活性発現が認められた。AlaR-N-Fragを塩酸グアニジン存在下で変性後、希釈法によりrefoldingさせた場合にも、GroESL共存下でのみ活性の回復が見られたが、この反応にはATPは関与しなかった。以上の結果は、人為的に改変したタンパク質が封入体を形成した場合でも、必ずしも変異によりタンパク質の高次構造形成能が失われたわけではないことを示すものとして注目される。
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