研究概要 |
放射光を用いるとカメラ半径の大きい振動カメラでは班点間の分離も良く500Åを超える格子の場合でも測定を行なえるが、未だ問題も多く残っている。超分子複合体の構造決定に有効な回折強度の測定には回折班点の分離能の高い、強度測定精度の高い装置の開発が不可欠である。 結晶格子が大きくなればなるほど回折班点の間隔が狭まる上に、回折線の強度も弱くなり精度の高い測定が困難になる。測定精度の低下は構造解析結果の精度に影響を与えるだけでなく、構造解析自体を困難にする。超分子複合体を対象にする場合はこの点で有利な方法を開発する必要に迫られている。これを克服するために静止法が有効である。 これまでに、マツクサイエンス社のDIP200Sを購入して静止及び振動両用のカメラの作製した。振動カメラの読み取りの高速化及び、回折強度処理システムの構築は、Yale大学のOtwinoskiによって開発されたDENZOを中心に据えて行なった。 まだコンピュータの容量が十分でないために完全な静止法のみによる回折強度収集は出来ていないが、静止法の可能性を実証するために、振動範囲を狭めて強度測定を行なった。格子定数がa=189.1Å,b=219.5Å,c=178.6Å,α=β=γ=90°で非対称単位の分子量が約100万のチトクロム酸化酵素の結晶では、振動範囲の広いときに比べて高い精度のデータを得ることが出来た。
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