トランスゲニックマウスを用いた多能性幹細胞の不死化と分化誘導

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06558104
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 帯刀 益夫 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (10099971)
• 研究分担者: 堀内 正 第一製薬株式会社, 創薬基盤研究所, 所長 ; 松居 靖久 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (40241575) ; 矢内 信昭 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (80200525)
• キーワード: トランスゲニックマウス / SV40T-抗原 / 造血幹細胞 / 始原生殖細胞 / 消化管上皮幹細胞 / 不死化

研究概要

本研究では、温度感受性SV40T抗原遺伝子導入トランスゲニックマウスを用い、これまで細胞株の樹立が極めて困難であった多能性を持つ幹細胞である造血幹細胞、始原生殖細胞、消化管上皮の幹細胞の不死化を行うとともに、これら多能性幹細胞の分化誘導系を構築し、生体の高次組織機能の再構成を行うことを目的とした。
その結果、造血幹細胞の不死化については、既にts-T-トランスゲニックマウスから樹立した骨髄間質細胞株をフィーダーとして、セルソーターより精製分離した造血幹細胞を共培養を行い長期継代を可能にした。とくにBリンパ球系幹細胞は間質細胞依存に不死化した細胞株が得られ、詳しい解析の結果、この細胞は自己複製をしつつB細胞系列に分化誘導できることが分った。また、トランスゲニックマウスからの幹細胞を用いて培養を行い、幹細胞の表現型を維持したまま間質細胞依存に不死化した細胞株が得られ、分化誘導も可能であることが分かった。このように造血幹細胞の不死化はある程度成功した。一方、始原生殖細胞の不死化についてはBc1-2トランスゲニックマウスを作出し、このトランスゲニックマウス胎児由来の始原生殖細胞を、既に確立した培養系を用いて長期継代し、不死化始原生殖細胞株の樹立を行ったが、不死化しないため他の方法を検討中である。また、消化管上皮幹細胞の不死化については、トランスゲニックマウス消化管から組織培養を行い、粘液生産消化管上皮細胞の不死化に成功したが、幹細胞の不死化はまだできていない。

研究成果

• [文献書誌] Nimoto,Y.: "Regulatory function of delta/YY-1 on the locus control region (LCR) -like sequence of mouse glycophorin gene in erythroleukemia cells." J.Biol.Chem.271. 13542-13548 (1996)
• [文献書誌] Furuchi,T.: "Inhibition of testicular germ cell apoptosis differentiation in mice misexpressing Bcl-2 in spermatogonia." Development. 122. 1703-1709 (1996)
• [文献書誌] Yanai,N.: "v-Src interferes with the in vitro erythropoietic stimulatory ability of the spleen stromal cells through repression of VCAM-1 and SCF." Exp.Hematol.24. 883-887 (1996)
• [文献書誌] Mataga,N.: "Establishment of a novel chcndrocyte-like cell line derived from transgenic mice harboring temperature sensitive Simian Virus 40 large T-antigen gone." J.Bone and Mineral Res.11. 1646-1654 (1996)
• [文献書誌] Kodaira,K.: "Overexpression of c-Myc induces apoptosis at prophase of rat primary spermacytes." Mol.Reprod.Dev.45. 403-410 (1996)
• [文献書誌] Matsubara,N.: "Areceptor tyrosine kinase, Sky, and its ligand. Gas 6 are expressed in gonads and support primedial germ cell growth or survival in culture." Develop.Biol.180. 499-510 (1996)
• [文献書誌] Obinata,M.: "Challenges of Modern Medicine, Vol.10, Differentiation Therapy" ed by S.Waxman, Ares-Sereno Sympasia Publications, Rome. Italy, 5 (1995)
• [文献書誌] Obinata,M.: "Challenges of Modern Medicine, Vol.10, Differentiation Therapy" ed by S.Waxman, Ares-Sereno Symposia Publications, Rome, Italy, 6 (1995)