研究課題
基盤研究(A)
本試験研究では、ムスカリン性アセチルコリン受容体を対象として高次構造解明の為の基礎研究を行った。当初の目的は下記の通りであった。(1)高次構造研究に必要な量の受容体を得るため、バキュロウイルスを用いた高度発現系及び抗原性の高いペプチドとの融合受容体を利用した効率的な精製系の開発、(2)十分量精製したムスカリン受容体の2次元結晶の調製と電子顕微鏡写真の解析による立体構造の解明、(3)リガント・受容体複合体のTransferred Nuclear Overhauser Effect(TRNOE)の測定、それによる受容体に結合したアセチルコリンの構造の決定とリガンド結合に関与するアミノ酸残基の構造の推定、(4)受容体3次元結晶の調製とX線による構造解析の検討。3年間の研究で下記のような結果を得た。(1)バキュロウイルスを用いた高度発現系の開発、適当な変異体を用いた高効率精製系の開発を行うことが出来た。(2)精製した受容体の電子顕微鏡での観察で1次元的な配列を示唆する結果が得られたが、まだ2次元結晶は得られていない。(3)受容体に結合したメタコリン(S(+)-O-acetyl-β-metylcholine)のTRNOEの測定を行い、C-C結合がトランスの配置をとることを示す結果を得た。(4)3次元結晶作製には精製受容体量が不足しており、まだその試みを開始していない。この研究の過程でいくつかの副次的な成果が得られた。(1)ムスカリン受容体m1-m5サブタイプをバキュロウイルス-Sf9系で発現させ、それらのリガンド特異性及び被可溶化能を決定した。(2)ムスカリン受容体m2サブタイプに特異的なアロステリックリガンド、αラパチョンを見出した。(3)ムスカリン受容体のカルボキシ末端にあるパルミチル残基の動態、機能を明らかにした。
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