研究概要 |
喉頭癌などで喉頭を摘出した人達は食堂発声など修得に極めて時間のかかる代用発声の訓練をしなければならない.実際にはこの代用発声に成功する人達の割合は少なく,また修得に成功しても発声音の音質は決して良くはない.そのため,修得が極めて容易な電気式人工喉頭が実用されているが,これもイントネーションを出せないため単調な音声になってしまうことから利用者も限られていた. ところで,肺は音声器官の一部として位置づけられることができ,呼吸の中には多くの情報が含まれている.今までの基礎研究から呼気で電気式人工喉頭のピッチ制御すなわちイントネーションを作り出せることを確認し,従来では考えられなかったような自然な音声を生成できることが多くの喉頭摘出者による検査から分かった。 本研究ではこのことを踏まえ,最適な呼気圧-ピッチ周波数変換関数を求める実験を行い,試作器を開発するとともにその使い勝手を喉頭摘出者に評価してもらった.その結果,十分実用性が高いことが実証され,札幌の電気メーカが実用器を試作するこができた.来年度は,この実用器を基にして個人差の問題および長期間使用による使い勝手の改善に関する研究を進め,できるだけ早く喉頭摘出者の手にわたるよう努力したい.
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