研究概要 |
この研究は、100Å以下の軟X線を用いて生物試料を生きたまま観察するための軟X線顕微鏡の開発を目的としている。 X線顕微鏡の線源として、従来はレーザー励起X線、シンクロトロン放射光などが線源として提案されてきたが、本研究においては装置の操作のしやすさ、X線発生効率、波長の可変性、軟X線強度、経済性などの観点からピンチプラズマ軟X線源を取り上げた。また記録媒体としての有用性からレジストを用いた密接型X線顕微鏡とした。現在までに得られた主な結果は次のようである。(1)ガスパフ付きプラズマフォーカス装置を開発することにより、N,C,O,Ne,Ar,Alなどの水素様、ヘリウム様、リチウム様などの高次電離イオンからなる密度10^<20>〜10^<21>/cm^3温度keV程度の安定なプラズマ生成法を確立した。(2)そこから放射されるパルス軟X線の波長、強度の空間分布ならびにその時間変化についての定量的測定法の開発を行った。(3)それらを手段としてピンチプラズマから放射される軟X線の特徴、再現性の検討を行った。(4)軟X線用フィルターならびにレジストを実験的に選定した。(5)得られた知見に基づく軟X線顕微鏡の試作と空間分解能などの性能試験を行った。(6)得られた軟X線による顕微鏡像を原子間力顕微鏡により可視化し必要な画像処理を行った。酵母菌およびとんぼのはねに生えている極めて微細な髭を観察対象とし、レジストとしてPMMAを用いた場合、一回の放電により内部構造を含む軟X線顕微鏡像が得られた。この際の空間分解能は0.2μmであった。
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