研究概要 |
1.病産院の室内環境に対する褥婦の意識調査(平成6年度)の結果から,現状の授乳に係わる空間レイアウトは,必ずしも満足されていないことが分かった.そこで,利用者の立場からの設計要求条件を得ることを狙いとして,褥婦と助産婦の持つ「母子異室の場合の授乳室」と「母子同室の場合の病室」に対する評価項目を得,さらに立場の相違および場の相違による評価項目の特徴を抽出しその特性を明らかにすることを目的に箱庭手法による実験を行った. その結果,(1)褥婦は生活および母親という観点で捉えるが,助産婦は介助と職場の視覚快適性という観点で捉えられている. (2)病室はプライバシーの観点で捉えられるが,授乳室は作業能率と危険回避という観点で捉えられてる. (3)褥婦は子どもが側にいるという安心から病室を好むが,一方,対話・学習・休養という観点から授乳室を好む.また,助産婦は管理と介助のしやすさという観点から授乳室を好むことが明示された. 2.前年度のアンケート調査結果より,授乳室における褥婦への情緒的・精神的な働きかけとして,褥婦相互のコミュニケーション&プライバシーの要素が指摘された.そこで,そうした要素に直接的に結びつくものと思われる授乳室における授乳椅子の具体的配置と褥婦との情緒的・精神的対応関係に注目し,取り上げた.研究方法はあらかじめ授乳椅子の配置7例を作成し実験した.さらに量的質的な解析を行うためレパートリーグリット法を用い,褥婦の特性を抽出するため女子大生と比較検討した. その結果,(1)褥婦にとって授乳は,褥婦同志の精神的相互関係がきわめて重要な事項となり,それが授乳室の配置と深く係わり合っていることが明示された. (2)授乳椅子の配置などに係わるインテリア計画上の資料をも得ることができた.
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