研究概要 |
本研究は,ガンのヘンリクスの存在論と認識論の統一的解釈をめざすものである.そのために,彼の存在論の「存在と本質の実在的区別の否定」という説の持つ意味を,13世紀の第4・四半世紀の思想の文脈のなかで多面的に考察する必要がある.平成7年度は,以下のような作業を行った.1)ヘンリクスの「存在論」関連文献収集.2)上記1の文献の読解,コンピュータによるデータ整理.3)ヘンリクスの「存在論」の解明.4)13世紀末の論争史関連文献収集.5)上記4の文献読解,コンピュータによるデータ整理.以上の作業の結果,ヘンリクスの「存在論」に関して以下のような知見が得られた. 〈もの res〉の存在構造 1)「一切の〈もの〉」res a reor, reris →およそ考えられるすべての事物.「空想」や「無」も含む. 2)「実在可能な〈もの〉」res a ratitudine →神の知性(イデア)との関係を有するもの.「本質存在」を持つ. 3)「現在存在する〈もの〉」res existentes →神の意志との関係を有するもの.「現実存在を持つ.」 上記三者は,同心円的構造を持ち,2)res a ratitudineが中心にある.
|