1.本研究の成果の一部として、『ニヤーヤ・シッダーンタ・ムクターヴァリ-』「言語論の章」のサンスクリット校訂テキストを作成した(成果報告書第1章)。これはこのテキストについての今後の研究の出発点となる。また、研究成果である「インド哲学における言語分析(4)」(成果報告書第2章)と「インド新論理学派における直接表示機能の把握手段と作用対象」(成果報告書第3章)は、上記テキストの正確な和訳と、異分野のインド哲学研究者にも理解しやすい解説とを含んでいる確信している。この2論文は、語の有する直接表示機能を知るための八つの手段のうち7つ(類比、辞書、信頼に足る人の言明、言語使用、補足文、換言、意味の知られた語が近くにあること)に関して、新論理学(新ニヤーヤ)学派と文法学派とミーマーンサー学派との間に見解の相違があり、それぞれの主張が具体的にどのような議論によって展開されたかを解明した。中世という時代では学派の主張の正統性の判断基準が論理的簡潔性にあるということも、本研究の成果である上記の論攷により明確となった。 2.本研究のもう一つの成果である"The Structure of the World in Indian Realism and Its Schematiza-tion"(成果報告書第4章)は、インド論理学の研究で用いられる、本研究者の勘案した図式が、インドの言語哲学研究においても有効かどうかを論じている。言語哲学研究に適するように図式の改良を行う必要がある点を指摘しているが、基本的には有効であることを確認できた。これは本研究の貴重な成果である。
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