本年度はプトゥン・リンチェンドゥプ(1290-1364)の註釈を入手し、その第9章「知恵の完成(般若波羅蜜)の分析、検討を行ない、プトゥンの引用する『人菩薩行論』本論のテキストにまつわる問題と彼の解釈内容を考察した。これと併せて 同註釈文献のコロフォン(奥書き)を検討することによって、これまで不分明であった『人菩薩行論』のチベット訳とサンスクリット語テキストとの間の内客的な不一致の問題の背景のいくつかを解明することができた。 この点は『東方学』第87輯に寄稿した論文の中で関説したが、本年6月にウィーンで開かれる国際チベット学会においてさらに詳細に発表する予定である。なお、本年度は プトゥン以外の5人のチベット人学僧による註釈文献も入手し次年度の研究に備えた。
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