研究概要 |
1.Bhattoji Diksita著Siddhantakaumudi『Karaka章』に関して,自注Praudhamanorama, Vasudeva DiksitaのBalamanorama, JnanendrasarasvatiのTattvabodhini,原典に対して常に批評的たろうとする新新文法学派の雄NagesabhattaのBrhat(Laghu)-sabdendusekharaといったこれらの諸注釈に基づき,第1格語尾(prathama-vibhakti)から第7格語尾(saptami-vibhakti)までのうち,第6格語尾(pancami-vibhakti)から第7格語尾までの和訳と解説を完了した. Bhattojiにおいては,upapadavibhaktiに関する諸規則がsesasasthiの規則に対する除外規定(apavada)として明確に位置づけられている.これはupapadavibhaktiの意味を〈関係〉として捉えようとする新文法学派の傾向を端的に示すものである. 2.karakaの相関概念であるkriyaの概念を明らかにするために,Bhartrhari著Vakyapadiya中のKriyasamuddesaの翻訳研究を行った. 「行為を産みだす要素」であるkarakaを〈能力〉(sakti, samarthya)とみなすkaraka理論においては,言葉に対する対象的世界の諸事象は多様な〈能力〉の複合体とみなされる.単一なる事象もそれが参与する〈行為〉に相関して,〈基体〉であったり,〈手段〉であったり,〈目的〉であったりする.この点に〈話者の意図〉(vivaksa)の理論の成立の根拠があった.どの〈能力〉のアスペクトを捉えるかに応じて多様な言語表現が可能となるのである.
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