本研究はミーマーンサー学派の根本文献「ミーマーンサース-トラ」に暗示される儀規から始めて、ジャバラスワーミンの「バーシュヤ」、クマーリラの「タントラヴァールッテイカ」、マンダナミシュラの「ヴィディヴィヴェーカ」、ヴァーチャスパティミシュラの「ニャーヤカニカー」、シャーリカナータミシュラの「プラカラナパンチカー」、パールタサーラティミシュラの「ニャーヤラトナマーラー」等の諸著作に引用される具体的な儀規の解釈学を解明することを介して、この学派の哲学的問題への係わりを解く手がかりを得ることを目的とした。研究の遂行に際して、これらの諸作品の翻訳を完成させることができたことは大きな収穫であり、かくしてミーマーンサー学派の通史的な理解を得る基盤は3年間の研究により一層整備された。本研究は従来の諸研究をさらに広い視点から前進させ、ひいてはインド思想史を聖典解釈学の側面から据え直すことを可能にするであろうと予想される。平成6年度は根本儀規(utpattividhi)という儀規と、関係儀規(viniyogavidhi)という儀規を、平成7年度は実行儀規(prayogavidhi)という儀規と、資格儀規(asdhikaravidhi)という儀規を中心にその解釈学を解明した。平成8年度は、以上二年間のクマーリラ派を中心とする研究成果をふまえて、クマーリラ派と対立関係にあったミーマーンサー学派の一派であるプラバーカラ派の解釈学とクマーリラ派のそれを比較検討することを介して、ミーマーンサー学派のクマーリラ派とプラバーカラ派の大学派それぞれの儀規理解の特徴を解明した。ミーマーンサー派の儀規の哲学的な本質的問題について研究を行う場合、マンダナの「ヴィディヴィヴェーカ」に立ち戻って諸問題を検討しなおすことが今後必須の要件になることも明らかになった。本研究の直接の成果は、資料として付した諸翻訳において準備されているように、むしろ今後それらを用いて漸次公表してゆくことになる諸論攻において明らかにされる予定である。
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