1.慶応義塾大学斯道文庫所蔵の梅園『贅語』関係稿本のマイクロ・フィルムを調査した。この調査によれば、『贅語』天地帙・身生帙関係の稿本は14点を数える。殊に身生帙は幾度も改稿がなされていることが判明するので、目下それらの比較・検討により、成立順序の推定を行っている。 2.梅園がその自然哲学を構築するにあたって、幾多の書物を参照したことは周知のところである。これらの書物を手近の東北大学図書館狩野文庫蔵本は無論のこと、東京都中央図書館、国会図書館、大阪府立図書館など東京・京阪神の図書館で調査し、一部資料を収集した。殊に、イエズス会士系西洋知識が梅園の西洋科学知識の理解・習得に与えた影響が重要なことに鑑み、梅園が直接利用したことが判明している書物のみならず、その周辺・関連文献及びその背景をも調査・検討した。 3.梅園は「浦子手記」と称する67冊もの膨大な読書ノートを残している。これは梅園が読書中備忘のため抜粋・筆写したメモであるが、彼が当該書のどの部分に注目したかを語る重要な文献と言える。そのうち21歳から35歳までの記録甲本14冊を調査し終えたが、例えば30歳の時のものには『天経或問』のものを写したと思われる天文図が認められるし、また32歳時には「大小腸の位」と題してこれらの区別に注目している。メモであるだけに、得られる情報は断片的ではあるが、これらを繋ぎ合わせ、書かれた年齢とともに分析するならば、梅園の思想形成を追跡する手掛かりになることは疑いなく、今後乙本以下の調査を期している。
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