1 土佐派絵画リストの作成と調査 (1)美術関係図書、博物館の図録、売立目録などから、土佐派絵師の名がが記されている作品を抽出し、そのリストを作成した。その結果、光則12点、光起136点・光淳2点・光文5点・光貞32点・光孚38点・光清8点・光武8点光時1点・光成42点・光裕12点・光芳32点などの土佐派絵師の作品図版を収集することができた。これらは相当数の実地調査を行い、落款や細部写真などを作成した。 (2)収集した作品データや細部写真から、土佐派の名絵師の作風が明らかになった。その結果、聚光院所蔵「沢庵宗彭像」及び南宗寺蔵「喜多見勝忠像」は、土佐光則の作品に比定でき、個人蔵の数点の茶人肖像は土佐光芳の作品に比定できた。光芳の作風と作品については発表論文を準備中である。 2 粉本および文献の分析 (1)「土佐家粉本」に含まれる肖像画下絵から、土佐家の歴代当主は医者、学者、禁裏に出入りする商人などと、深く交流していたことが明らかになった。さらに「桂宮家資料」からは土佐光芳が桂宮家に近習として出入りしていたことが明らかになった。 (2)「土佐家粉本」は宮内庁所蔵古文書類から、寛政時代、および安政時代の御所造営の実態が明らかになった。禁裏絵所預の土佐家の役割は、(1)造営資料の提供、(2)登用された絵師たちの監督であった。また造営資料とするために、各地から絵巻物が集められ、模写されて「土佐家粉本」に含まれたことも判明した。これらの絵巻と内裏障壁画との関係については、論文を準備中である。
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