研究課題/領域番号 |
06610054
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研究機関 | 東京国立博物館 |
研究代表者 |
金子 啓明 東京国立博物館, 学芸部・法隆寺宝物室, 法隆寺宝物室長 (90110098)
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研究分担者 |
岩佐 光晴 東京国立博物館, 資料部・資料第三研究室, 資料第三研究室長 (10151713)
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キーワード | 神仏習合と木彫 / 檀像 / 中国・唐代の木彫像 / 中国的な作風 / 僧侶の活動 / 勝尾寺薬師三尊像 / 神福寺十一面観音立像 / 大寺薬師四天王立像 |
研究概要 |
本年度に調査できた作例は以下の通りである。大阪府(勝尾寺薬師三尊像、男神立像)、奈良県(興福寺地蔵菩薩立像、同北円堂四天王立像)、京都府(醍醐寺聖観音立像)、鳥取県(観音寺千手観音立像)、島根県(大寺薬師四天王立像)、愛媛県(庄薬師堂菩薩立像2躯)、山口県(神福寺十一面観音立像)。昨年度は、主として京都府、奈良県所在の主要作例を中心に調査を実施したが、本年度は、地方所在の重要作例にも目を配って、調査を進めた。中でも、大阪・勝尾寺の薬師三尊像について調査できたことは、昨年度来、本研究の重要課題の一つとなっている神仏習合と木彫の関係を探求していく上で、大きな成果であったといえる。また、中国から請来された檀像の代表作である山口・神福寺の十一面観音立像の調査では、中国・唐代の木彫像のレベルの高さをあらためて確認し、8・9世紀木彫像のうち、中国的な作風をもつ諸像との比較において、有効な指標を得ることができた。そして、中国的な作風をもつ諸像において、従来曖昧にされてきた、中国製なのか日本製なのかの検討が、当該期の木彫像を考える上で避けられない基礎研究となるように思われた。さらに、本年度実施できた地方所在の作例のうち、島根・大寺薬師の四天王立像は中央作といえるほどの造形的なレベルの高さを示しており、その制作の背景に中央の僧侶や仏師の介在を推定させるものがある。8・9世紀における中央の僧侶の地方での活動の実際を追及する上で、重要な作例の一つと考えられる。 調査時に作成した調書、撮影した写真資料の整理も順調に進んでおり、調書はすべてワープロ化、写真はすべてファイル化している。また、研究分担者の岩佐が本研究の成果を踏まえて、9世紀木彫像の一つである大阪・観心寺の観音菩薩立像に関する研究論文を発表した。
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