本年度は、平成6年度の科学研究補助金で新たに購入したMacintosh社のPower PC8100/80システムを、前年(平成5年)度の科学研究補助金で購入したMacintosh社のQuadra 800システムと組みあわせて効果的に実験ができるように組み上げた。現在まで、当初の予定通り、これらの実験装置を用いて、中心窩から視角で50°位までのこめかみ側、鼻側、中心窩上方・下方の主要4方向の網膜部位において、運動閾、速度知覚、CFFなどを測定し、それらが(1)刺激光の大きさ、(2)空間周波数、(3)刺激光の色などから受ける影響について予備的な実験を行っている。実験装置・刺激の較正は、分担社の日比野が平成3年度の科学研究補助金(奨励研究(A))で購入したミノルタの色彩色差計CL-100システムを用いて行ってきた。 また、同時にこれまでのデータを基に周辺視色覚のモデルの構築も行ってきた。これに関しても順調に興味深い結果が得られつつある。その成果の一部は、論文『色:最近の研究動向』(Vision誌掲載)として発表される。現在まで、2°視野の等色関数と10°視野の等色関数とは、その色覚メカニズムとの関係という観点からほとんど考慮されてこなかった。しかし、この周辺視のモデルが完成すると、その両者の関係が色覚メカニズムの点から非常にうまく説明できるようになるものと予想される。このモデルの完成は、次年度の予定である。したがって、これらの点から、本件球には人間の色覚のメカニズムにおける中心視と周辺視の相違についての非常に大きな貢献が期待できる。
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