本研究課題においては、Macintosh社のPowerPC8100/80システムを利用した高解像度のカラー・ディスプレイによる色覚実験装置を構成し、実験を行ってきた。この一連の装置は、視知覚の実験を非常に容易に、かつ精密に行えるという点で画期的なものであり、現在まで、本研究課題について、様々な興味深い結果を明らかにしつつある。特に、現在の色覚モデルでは、暗黙のうちに、中心窩色覚と周辺視色覚は本質的相違はないと考えられているが、yellow-blueの反対色過程は中心視と周辺視では変換式が異なることが明らかになってきた。そして、この結果を基に周辺視における色覚モデルを構築したが、このモデルは2°視野と10°視野の標準観測者の特性を統一的に説明できるものである。また、中心窩および網膜周辺部位における色刺激に対する反応時間の測定の結果、視方向による異方性なども明らかになりつつある。本研究課題は、以上のような成果をあげ、現在も進行中であるが、最終的な成果を報告書として提出するにはもう少し時間が必要である。それは、現在行っている主要な実験が、実験プログラムのバグ等のために予定よりも遅れてしまい、未だ予備実験の段階に留まっているため、最終的な結論を導くに至っていないからである。しかし、今後は、中心窩および網膜周辺部位におけるCFF、運動閾、運動の速度知覚などの問題も扱う予定であり、今までの成果と合わせ、中心視と周辺視の特性の研究に大きな貢献が期待できるものと思われる。
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