研究概要 |
本研究は、カジカと鳴禽類を被験体として、動物の振動感覚世界を明らかにすることが目的である。そのために本年は、カジカでは中枢神経系の構造的な種間比較と、行動比較を行うためのカジカの維持技術の開発を、各禽類では、インコの振動刺激の感度に対する周波数特性を明らかにすることを目的とした。 カジカでは、バイカル湖産の3種のカジカおよび日本産カジカ、キンギョの中枢神経系の外見的な特徴を検討した。その結果バイカル湖産のうち浅瀬域に生息するカジカと日本産カジカは非常によく似た、キンギョと同じくらいに発達した中枢神経系を持っているが、バイカル湖に特有の1,600mの深層域に生息するカジカはその未発達な形態を特徴とした。(このことは1994年日本動物心理学会で報告された。)一方、行動研究のためのカジカの維持については、昨年7月に入手した固体が3月時点でも維持されており、飼育技術に一定のめどがたった。次年度はこれらのカジカを用いて行動の実験が行われる。 鳴禽類では、振動刺激に対する感覚中枢からの誘発電位を記録するには,深部電極の脳内刺入が正確に行われる必要があり、頭部の定位固定が重要なカギとなっている。インコの場合はこの固定法が未だ無いため、本年度の研究は脳定位固定法の開発に主眼を置いた。インコの頭蓋骨標本をもとに、前部及び後部固定点の候補場所を検討した。その結果、後部固定点として両外耳道が、前部固定点として眼窩前縁部が最適な部位であることを見出した。さらに、試作した固定用アダプターでインコの頭部を固定し、2-deoxy-D-glucoseを用いて聴覚系伝導路の追跡も行なった。その結果,インコの聴覚伝導路は他の鳴禽類とは異なることが示唆された。なお,本研究で得たインコの脳定位固定に関する結果は論文として発表し現在印刷中である。
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