魚類研究では、バイカル湖の浅瀬域に生息する(日本産のカジカと近縁にあたる)2種の摂餌行動を、水槽内飼育環境下で観察し、摂餌に対する行動のバリエーションと、それが日周の特定の時期と関係があるかということを見た。その結果、活発に運動をする餌(ガンマルス)ほど、カジカの摂餌行動を誘発した。しかし、どの時間帯でも同じではなく、観察される時間帯によって、誘因価が異なっていた。バイカル湖のカジカでは、夕方(16時頃から20時頃にかけて)に活発な摂餌行動が生じるが、明け方にはそのようなことはなかった。またこの摂餌行動と比較するために、現在日本産カジカに対する餌振動の周波数特性を検討中である。中枢神経系の形態比較では、従来の成果に他個体のデータを加え、同様の結果を得ている。 鳥類研究では、昨年に続き本年度も九官鳥の発声音声の特徴を検討した。輸入幼鳥に人言語音を学習させ、その発声音声の母音構造をみた。母音は第一フォルマントと第二フォルマントの周波数の組合せでそれぞれの母音が弁別されるため、九官鳥の母音の上記2つのフォルマント周波数を見た結果、インコのフォルマント構造とは異なり、人のフォルマント構造の方に近い様相を示した。各母音の第一および第二フォルマントの平均周波数は、/あ/が719±193Hz、1391±204Hzであり、/え/が692±108Hz、1796±540Hz、/い/が390±43Hz、796±150Hz、/お/が559±96Hz、11561±192Hz、/う/が616±155Hz、1541±612Hzであった。このフォルマント周波数から分かるように、実際の周波数は人の平均的なフォルマント周波数とも異なっていた。その結果、各母音の第一および第二フォルマントをX軸とY軸にとり、2次元のグラフに表したときの、母音相互の位置関係が人の発声母音の位置関係とも異なっていた。
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