魚類のカジカ類と鳥類のインコ・九官鳥を被験体として、生体の振動刺激の認知に関する研究を進めた。 カジカ類での研究では、3種のバイカル湖カジカ、日本カジカ、キンギョの中枢神経系の形態比較から始めた。この結果ワキンには顕著に見られる迷走葉がどのカジカ類にも見られなかった。また視葉の発達は光の利用可能な領域を遊泳する種で大きく、振動刺激を処理する経路と考えられている小脳は、カジカ類の方がワキンよりも大きかった。特にゴロミャンカは前脳・視葉の発達がとても悪いのに、小脳の発達だけは他の種よりも進んでいた。カジカ類の行動研究では、日本においてカジカ類を被験体とした行動研究は、実験室環境では行われていないため、日本カジカの人工飼育を試みた。その結果雑魚環境、低温度、水質管理の条件を揃えることで維持が可能なことがわかった。このカジカを被験体として、振動刺激として水流刺激を用い、カジカの水流利用の可能性を検討した。その結果カジカは水流情報に基づいて餌の位置を弁別することがわかった。 一方、インコを被験体とした発声一聴覚系の脳神経科学的研究では、将来的に発声一聴覚中枢の電気的活動を記録する為に深部電極の脳内刺入が正確に行われる必要があり、頭部の定位固定が重要なカギとなる。インコの場合にはこの固定法が未だ無いため、脳定位固定法の開発を最初に検討した。試作した固定用アダプターでインコの頭部を固定し、2-deoxy-D-glucoseを用いて聴覚系の伝導路の検討を行なった。その結果、インコの聴覚伝導路は他の鳴禽類とは異なる経路となることが示唆された。一方九官鳥では発声音声の特徴を検討した。幼鳥に人言語音を学習させ、その発声音声の母音構造をみた結果、第一フォルマント(F1)と第二フォルマント(F2)の周波数は、インコのフォルマント構造とは異なり、人のフォルマント構造の方に近い様相を示していた。
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