研究概要 |
カテゴリー化実験の中で人工的視覚パターンを刺激として用いてきた以前の研究が得た知見が自然な視覚パターン(例えば蝶)のカテゴリー化にもあてはまるかどうかを問題とした.6つの実験が行われた.実験1,2,3は蝶の略画図形を刺激とした.被験者にプロトタイプからの変換距離を様々に変えたパターンの事例セットが呈示され,その後.再認評定テストが与えられた.これらの実験から次のことが明らかになった.(1)再認評定値は変換距離(Franks & Bransford, 1971)よりむしろ事例の家族的類得似点(Rosch & Mervis, 1975)と関係があること,(2)各事例の家族的類似得点(FRS)が一定に保たれた時,刺激の5つの物理的特徴(前翅,後翅,大きさ,色,体長)が再認確信度に与える影響は異なっていた.さらに,各事例のFRSと各特徴の出現頻度が一定に保たれた場合でも,各特徴の再認評定値に与える影響は異なっていた.とりわけ,前翅は再認評定値にもっとも影響する特徴であった.実験4,5では,自然な蝶の写真に加えられた変換の種類の効果が調べられた.再認テストにおいて削除された特徴を持つパターンよりも追加された特徴を持つパターンの正答率が高かった.さらに,前翅の影響度が大きいことがここでも認められた.実験6において、変化の種類の効果と,各事例と蝶の典型的なイメージとの類似性判断との関係が調べられた.その結果,追加された特徴を持つパターンは削除された特徴を持つパターンよりも普通でない,奇妙なものであると判断された.この追加と削除の再認に及ぼす非対照的混同効果は各事例とプロトタイプイメージとの類似性という変数によって媒介されていることが示唆された.
|