研究課題/領域番号 |
06610078
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
池田 行伸 佐賀大学, 教養部, 教授 (50159638)
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研究分担者 |
酒井 誠 佐賀医科大学, 医学部, 教授 (80124808)
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キーワード | パターン弁別学習 / 出生時片眼摘出 / 大脳皮質視覚野破壊 / 同側視覚神経経路系 / フッデッドラットの視覚 / 脳の可塑性 / 神経系の補償作用 / 縦縞-横縞弁別 |
研究概要 |
十分成熟した3ケ月齢の片眼が摘出されたアルビノラットに白黒弁別学習課題を与え、獲得後、残存眼と反対側の皮質視覚野を破壊して、再び同じ課題で訓練すると、出生直後に片眼を摘出されたラット(OEB)は、3ケ月齢で片眼を摘出されたラット(OET)より速く再学習することができた。これは出生直後の片眼摘出によって残存眼と同側の視覚神経路系(UXVP)が補償的に再編成したためであると考えられた。この機能高進には解像度の向上が考えられたので、縦縞、横縞の弁別を行うことにした。この研究には視覚能力が高い有色系ラットを被験体として用いた。縞の幅を20mmから5mmへと段階的に下げてゆき、解像能力を調べた。まず、30mmの縞の縦縞と横縞を弁別させ、その後残存眼と反対側の皮質視覚野を破壊して再学習を課した。30mmの縞の弁別の再成立にはOEB、OETの差はなかった。段階的に縞の幅を狭くすると、OETは10mm、OEBは7.5mmの幅まで弁別することができた。しかし、反対側皮質視覚野破壊後にはじめて課題を与えると、OEB、OETとも弁別学習が成立しなかった。いったん学習した後、UXVPを用いて再学習するとかなり狭い幅の縞模様を弁別できた。そして、OEB、OETの弁別可能な縞幅の差は、初めに考えられたほどの大きなものではなかった。このようなことから、OEBの視覚能力の高進は、最初に仮定された解像度の向上によるのではなく、別の機能によることが考えられた。OEBがOETより視覚野の誘発電位記録可能部位が広いことから、OEBの視野の広がりが、手がかりに対する認知能力を高めているということが、ひとつの可能性として考えられた。現在、この問題を明らかにするため、研究を進めている。
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