研究概要 |
平成7年度は,ラットとハトのリスク選択場面を取り上げ,実験的検討を行うとともに,確率の遅延時間への変換可能性について考察を行った. ラットの実験では,遅延時間と確率の機能的等価性を調べるために,ペレット1個(45mg)で40秒の遅延時間の選択肢に対し,ペレット3個の選択肢の遅延時間を40秒から増加させるか(遅延時間条件),確率を1.0から低下させて(確率条件),選好が無差別となるときの遅延時間の値または確率の値を求めた.遅延時間の平均値は,97.5秒,確率の平均値は,0.425となった.この事実は,強化量の遅延時間または確率への変化が比例(線形)関係ではないことを示している.言い換えれば,リスク嫌悪と遅延嫌悪が生じたといえる.次に,各個体毎に求めたこれらの値を用い,確実で遅延時間の長い選択肢と不確実で遅延時間の短い選択肢を設け,選好が無差別となるか否かを検討した.この結果,すべての個体で選好は無差別となり,遅延時間と確率の機能的等価性が成立した. ハトのリスク選択場面では,まず,遅延時間と確率次元に対する感度を一般対応法則に基づいて測定するために,各次元4種類の値を用いて選好を調べた.次に,この感度データを用いて,確実で遅延時間の長い選択肢と不確実で遅延時間の短い選択肢を設け,一般対応法則からの理論値が確実側となる場合と不確実側となる場合の遅延時間と確率の組み合わせを二条件作り,ハトの選好がどのように変化するかを調べた.その結果,確率の感度がかなり低く,この原因を探るための実験的検討を行う必要があった.選択肢の手がかりを明瞭にすることで,ある程度確率の感度が高くなることがわかり,この手続きを採用して,一般対応法則からの予測と選好が一致するか否かを検討したところ,質的なレベルでは概ね一致したが,量的予測という点では,不十分であることが示された.
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