本一般研究(C)の第1年目では、男子大学生28名を被験者とし、無拘束ホルタ型血圧-心拍出量計を装着させて、被験者の血圧、心拍出量、末梢血管抵抗を、日常生活場面で24時間にわたって間欠的(5分毎)に計測した。その結果、本研究の第1の目的=「体動・運動・飲食・ストレスなど、血圧が上昇する場面(昇圧エピソード)を特定する」こととの関連では、次のようなデータが得られた。すなわち、まず始めに、いずれの被験者においても、24時間全体を通して見た血圧の日内変動には、明らかな2相性(覚醒時対睡眠時)が認められ、これに昇圧エピソードと関連する小さな変動が重畳していた。そこで、頻度の高い昇圧エピソードとしては、会話(電話を含む)、TVおよびTVゲームなどが特定され、高頻度ではないが顕著な血圧上昇を惹起させるエピソードとして、運転および通学などが挙げられた。次に、本研究の第2の目的=「各昇圧エピソードの血行力学的機序が、心拍出量増加対末梢血管抵抗増加、のいずれであるかを解明する」こととのかかわりでは、上述のような、いずれも能動的対処課題では、ほぼ予想通り、心拍出量が増加するのを認めた。しかし、受動的対処課題(監視、忍耐、無力、・・・)は、これをエピソードとして特定するのがそもそも難しく、したがって、末梢血管抵抗増加のケースを確認することができなかった。こうした第1年目の結果から、昇圧エピソードと対応させるために、被験者につけさせた「日誌」について、なお改善の余地がある。加えて、本研究で導入した、無拘束ホルタ型血圧-心拍出量計自体が、プロトタイプであるための欠陥を有しており、これの改善もなお検討すべきである、との結論に達した。
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