平成7年度は、平成6年度に引き続きラジオパーソナリティの音声分析を行ったが、特に音韻情報と音質情報の統合課程と加齢との関連に焦点を当てた。 また、この問題に関連して、成人健聴者の音高知覚と時間知覚の間の相互作用に及ぼす時間要因の影響についても、純音を用いた心理実験を行って調べた。 以上の研究から、次のような結果が得られた。 (1)音の高さに付いては、平均値でみればプロの方が低い傾向にある。特に、年輩の聴取者に好まれるプロのパーソナリティの場合は、この傾向が強い。これは、一般に加齢と共に聴力は高周波数から落ちてくるので、特に年輩の視聴者にとっては、低い声の方が聞き取り易いためかも知れない。 (2)音高知覚と時間知覚の相互作用は、提示時間の範囲によって影響を受けることが示された。余りにも短い時間範囲(例、0.1秒)や長い時間範囲(例、15秒)の場合には、判断に一貫性が欠けたり、相互作用が生じにくくなることが分かった。もっとも相互作用が大きいのは、時間範囲が1ないし2秒位の時である。これらの結果については、音の高さを保持する短期記憶の様式が異なるためであると考えられる。 以上の結果については今後、知覚実験による検討を行うことが必要であると考えられる。
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