研究概要 |
本研究の目的は,無生物を生きているとするアニミズム的傾向が幼児や児童,大人では質的に異なるのかどうかを明らかにすることであった。幼児(年長児)57名,小2児童64名,小5児童80名,大人(大学生)90名,計291名を被験者として,(1)生-死の次元での生命認識に関する調査と,(2)感覚(痛さ),欲求,思考,感情(喜び),心といった心的属性の付与に関する調査がおこなわれた(幼児と小2は個別の面接調査,小5と大人は質問紙調査)。主な結果は,次の通りである。 1.無生物を生きているとする者の割合を対象別に示すと,幼児,小2,小5,大人の順に,「石」(31.6,39.1,22.5,16.7%),「時計」(47.4,65.6,35.0,18.9%),「自動車」(54.4,59.4,33.8,20.0%),「人形」(31.6,42.2,25.0,12.2%)であり,小2において無生物を生物と見なす傾向が強いことがわかる。 2.無生物を生きているとする者にとっての「無生物」とは,対象や学年(年齢)によって差異はあるが,約60〜90%が「生き続ける」ものであるか,または「いつかは死ぬが生き返ることがある」ものか,そのどちらかによって占められており,「いつかは死んで生き返ることはない」の値は10%以下がほとんどであった。 3.4つの無生物に対して感覚,欲求,思考,感情,心といった心的属性を付与する者の割合の全体の平均は,幼児,小2,小5,大人でそれぞれ28.7%,54.2%,9.8%,7.9%であり,とりわけ小2においてその割合が高いことがわかる。なお,対象別に見ると,幼児と小2では石の場合には,時計や自動車,人形よりも約20〜30%低いが,小5と大人ではそうした差異は認められなかった。 なお,現在,個人ごとの定性的なデータの分析を継続中であり,その結果と定量的なデータ分析による上記の結果との総合によってさらに新たな知見が得られると予想される。
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