研究概要 |
感情表現スタイルが,いくつかの心理的・身体的illnessと関係していることは知られている.このように感情表現の欠如が不健康を導くとしたら,感情を適切に表現することは精神的健康(Subjective well-being)を導くと思われる.しかし覚醒された情緒反応を抑えるよりも、表出させる事がより健康的であるとしても,表現への動機づけの仕方によって,その後の個人well-beingは異なってくると推測される.したがって本研究では,いかなる感情表現スタイルが精神的健康を予測するといった視点から,精神的健康を促さない感情表現スタイルについて見いだす事を目的とした.その結果以下のような知見が見いだされた. 1.感情表現スタイルについての因子分析結果より,第1因子では「内発的」感情表現スタイル〔うれしいときは声をあげたり体で喜びを表現する)といった表現への動機づけが高い自発的表現スタイルが見いだされた.第2因子では,(顔の表情から自分の感情が人に伝わってしまう方である)など望ましい感情の表出がなされており,表出しの動機づけは低いと考えられ,「コントロール不可」のスタイルといえよう.第3因子は,(思い通りに運ばなかったらがっかりした様子をする)など,表出しの動機づけは高く感情表現への重要性を認めており,表出へと「自律的」に動機づけられているスタイルと命名できるよう.第4因子は(怒ってよいのが喜んでよいのか迷う事がある)といったように,表現の仕方がわからないといった「unknown」の表現スタイルといえよう. 2.これらの4因子と精神的健康(well-being)尺度・negative affect得点との関連をみたところ,第1・3因子の感情表現スタイルは精神的健康を促進し(r=.29(p<.001),r=.23(p<.01)),negative affectとは関連がなかった(r=.03(n.s.),r=-.04(n.s.)).反対に,第4因子のスタイルは精神的健康とはr=-.38(p<.001),negative affectとはr=.24(p<.01)で,well-beingを抑制することがわかった.第2因子のスタイルは精神的健康とは関連が認められず,negative affectとr=.20(p<.01で関連が見いだされ,このようなコントロール不可の表現スタイルは、ストレス感情やill-beingに影響するのではいかと予測される.第4因子のスタイルとともに,今後さらに検討する必要性が示唆された.
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