研究概要 |
メンタルヘルスにかかわる問題は,これまで無気力や抑鬱,ストレスの問題が取り上げられてきたが,これらはいずれもunhappinessの状態であった.本研究では人間行動を望ましく動機づけるのはhappinessの状態である事に着目し,これまで取り上げられる事のなかったpositiveな感情としての「Well being」について解明し,それを手がかりに生徒のメンタルヘルスを促進させるストレスマネージメントや学校適応の問題について明らかにされた. 1.大学生活において,精神的健康(Well-being)の高群と低群について,ストレスマネージメントの情緒的対処方略のうち『行為の抑制』については有為な差は見られず,必ずしも「何事もなかったように振る舞ったり」「自分の感情を出さない」がWell-beingにはつながらないことが見いだされ,前年度の感情表現スタイルについての研究を支持する結果が得られた.『直接行為』によるマネージメントについてはp〈1でWell-beingの高い群の法が「自分におこっている事を誰かに話したり」「気持ちを発散させたり」「いかりを爆発させたり」している傾向が見いだされた.このマネージメント方略は精神的に健康さが保てるとしても適応との問題でさらに検討していく必要性が示された.次に認知的対処方略についてはp〈01で有意に精神的健康群のほうが多く用いている事がわかった.「自分にいきかせたり」「物事の明るい面だけをみようとしたり」「自分にとっては良い経験だった」と考えるなど,Well-beingを保つために自らの積極的な浄化作用を行っていることが大切であると考えられた. 2.思春期の中学生について,適応はよいためこれまで現場では見逃されてきたが,実際はうその自己提示によって自己を表現している,いわゆる"よい子"の精神的健康について検討された.結果,"よい子"はそうでない子にくらべて,有意に高い(p〈.05)「Happiness」を報告している.しかしいいことがあったというわりには,「不満足度(p〈.1)」「negatine affect(p〈.001)」が非常に高く,また「社会的不安」も0.1%水準で高い.真実の自分を出せず一見適応していると見えるこれらの"よい子"の内的適応すなわち,精神的健康について今後検討していく必要があると思われる.
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