幼児期から児童期にかけて、子どもは何を手がかりに自分のコンピテンスを認識するかについて、幼稚園児、小学校低学年児、小学校中学年児を対象に検討した。具体的にはコンピテンス、自己形成方途に関する面接、およびアンケート調査を実施すると同時に、日常行動を観察し、それらの発達的変化、および面接資料との関連を検討した。得られた結果は以下のようにまとめられる。 1.コンピテンスの発達的変化:幼稚園年少から年長にかけて、年長から小学校低学年にかけて、小学校低学年から中学年にかけて低下すること、特に学習に関するコンピテンスの低下が顕著であること、が明かとなった。 2.自己を知る手がかりの発達的変化:(1)自分自身を手がかりとする自己観察、(2)他者を手がかりとする他者からのフィードバック、(3)他者を手がかりとする社会的比較を取り上げた。その結果、幼児では、(1)自分を知る手がかりとして自己観察を最も用いること、(2)その割合は年長になるにつれて高くなること、(3)年少児ではその他の解答が多く、自己認識の手がかりははっきり認識されていないこと、(4)社会的比較は最も用いられていないこと、(5)園による違いが若干見られること、などが明かとなった。したがって、コンピテンスの低下は自己を手がかりとした自己観察によってもたらされていることが示唆された。 3.日常行動との関連:自己を知る手がかりの1つである社会的比較に関して、(1)生起頻度は自己形成方途の中で少ないが年齢とともに多くなること、(2)他児への関心、直接的・間接的評価が増えるのに対して、類似性の確認は減少すること、などが明かとなった。 4.今後の分析:地域文化が及ぼす影響については、今後、詳細な分析を加えていく予定である。
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