本年度は、集団内におけるチャンス事態についての判断を取り上げ、それが個人の集団主義的傾向/個人主義的傾向によって、どのように影響されるかを実験的に吟味した。人は、歴史的にも困難な状況にある時には集団の力によってそれを解決してきたので、個人よりも集団状況の方が安全だとみなす傾向をもっていることが予想される。しかし、状況によっては、集団の存在は必ずしも高い安全性に結び付くとはかぎらない。そのような場合でも、集団と高い安全性の期待が強く結び付いているために、人は集団の存在下で高い安全性を期待するであろうという仮説を立てた。そして、このような傾向は集団主義的な者の間で強いことを予測した。被験者は、個人条件と集団条件に分けられ、苦そうな液体を飲む条件か、それを飲まないですむ条件のどちらかに振り分けられると告げられた。そして、どちらの条件に割り振られるかは、個人がくじをひいた結果によるか、4人グループの全員がくじを引いた結果によると告げられた。その際、どちらの条件でも、客観的には被験者が苦そうな液体を飲む事になる確率は等しくなるように操作されていた。その結果、グループの是認がくじを引いた結果によると告げられた被験者の方が、自分は苦そうな液体を飲まずにすむと予想する傾向がみられた。ただし、自分がどちらの条件に割り振られるかについての予想は、被験者の集団主義的傾向/個人主義的傾向によっては影響されていなかった。
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