本研究では、語彙獲得初期にある子ども達の語彙確定の計算を軽減する制約(対象全体・カテゴリー・相互排他性)のうち、カテゴリーバイアスを取り上げる。従来、カテゴリーバイアスは機能的のものとしてしばしば「概念的カテゴリー」とも呼ばれており、子どもは生得的に分類概念についての敏感性を示すとされてきた。しかし第1に「カテゴリー」は果して機能を基盤として形成されるのか、第2に、概念カテゴリーは果して生得的なものなのかという点を、3つの実験を通して明らかにする。 平成6年度は、「年少字ほど知覚次元に敏感か」という点に関して検討を行った。実験では、Markmanら(1992)の実験材料を改善し、カテゴリー判断の基準は何か、概念カテゴリーへの敏感性は生得的か学習かを検討した。その結果、予測以上に知覚的類似性に基づく判断が多くなされ、3、4歳児はほとんどが知覚的類似性によってカテゴリーを形成している可能性を示唆している。しかし、5歳児になると、名詞群では概念関係での分類が多く、助数詞群では知覚的類似性に基づく分類を行っている。また、特定次元についての刺激選択の後、シフト課題を行うと、5歳児では、次元シフトがスムーズであるが、低年齢児はいったん特定次元に注目すると、別次元に気づかぬ傾向傾向が多いという結果が得られた。 以上の結果から、カテゴリー形成においては、知覚的類似性が判断基準として重要であるが、加齢に伴い、名詞では概念関係でカテゴリーを形成し、助数詞では知覚的類似性の判断基準が優勢になることが明らかにされた。
|