本研究では、語彙獲得初期にある子ども達の語意確定の計算を軽減する制約(対象全体・カテゴリー・相互排他性)のうち、カテゴリーバイアスを取り上げる。従来、カテゴリーバイアスは機能的なものとして「概念的カテゴリー」とも呼ばれており、子どもは生特的に分類概念について敏感性をを示すとされてきた。しかし、第1に「カテゴリー」は対象事物の機能を基盤として形成されるのか、第2に、概念カテゴリーは果して生得的なものなのかという点を3つの実験を通して明らかにする。 平成6年度の実験1では、年少ほど対象事物の色や形状という知覚的次元への敏感性が高く、3、4歳児のほとんどが知覚的類似性によってカテゴリーを形成していることが明らかにされた。また助数詞のように知覚的次元でカテゴリーが作られることの多いラベルを与えるときには、5歳児でも概念次元から知覚的次元へのシフトが見られた。 平成7年度は、実験2と実験3の二つの実験を行った。実験2では、知覚的次元のどの側面が有効かについて明らかにするために、材料を色と形状の要因を分離して検討した結果、色よりも形状の要因が重要であることが明らかにされた。並行して行われたアメリカの子どものデータもこの結果を追認するものであった。 実験3では、子どもに対象の機能を教えることにより、年少児であっても、概念次元に気づくことができることを訓練実験によって明らかにした。 これら一連の知見は、第1に、「カテゴリー」は対象事物の知覚的次元特に形状を基盤として形成されはじめ、次第に機能に注目できるようになること、第2に、概念カテゴリーは学習によって徐々に獲得されるものであること明らかになった。
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